ぷるんとした弾力、なめらかな口あたり、そして甘くて優しい味わい。言わずと知れた人気スイーツ「プリン」は、今や日本の食卓やコンビニでもお馴染みの存在ですね。
カラメルの香ばしさと卵の濃厚な風味が合わさる、あの黄金バランス。焼きプリン派の方も多いのではないでしょうか。
そんな親しみ深いお菓子「プリン」ですが、ふと気になることがあります。
「漢字で書くとどうなるの?」
「甘柔菓子」?「滑卵羹」?…そんな想像を膨らませつつ、実際の表記を調べてみると意外な漢字が出てきます。
プリンの漢字は「布顚」または「布顛」!?
意外かもしれませんが、「プリン」には漢字表記が存在します。しかも、実際に辞書にも掲載されている、れっきとしたものです。
その表記がこちら:
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布顚(ふてん)
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布顛(ふてん)
この2つの表記、字面だけ見ると高級料理か武将の名前にも見えてしまいますが、どちらも「プリン」と読む当て字です。
ではなぜ、このような字が使われているのでしょうか?
意味ではなく“音”を優先した当て字
まず、これらの漢字は本来「意味」から来ているわけではなく、「音」に注目して作られたものです。
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「布」は音読みで「フ」 → 「プ」と近いため選ばれました。
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「顚」「顛」は音読みで「テン」 → 一見「リン」と関係ないように思えますが、ここがポイントです。
実は「プリン」という言葉は、英語の “pudding”(プディング)がもとになっています。
英語の発音を日本語に取り入れる際、「プディン」や「プディング」が、「プリン」と変化していったと考えられています。
耳で聞いた音のニュアンスを、そのまま当てたのが「布顚」「布顛」というわけなんですね。
「顚」は偶然にも“プリンらしい”意味を持っていた
当て字だから意味は関係ない——と思いきや、実は「顚」という漢字の意味を調べてみると、ちょっと面白い事実が。
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顚(顛):頂点、ひっくり返る、倒れる
そう、まさにプリンをお皿に出すときの動作にぴったり当てはまるんです。容器を逆さまにしてプリンをつるんと出す——そんなシーンを連想させます。
偶然とは思えないほどの一致。音だけでなく、ある意味“プリンらしさ”まで表している漢字だったんですね。
「布顛」と「布顚」はどう違う?
字面だけ見るとほぼ同じに見えるこの2つの表記ですが、微妙な違いがあります。
つまり、内容としては同じで、使われている字が新旧で異なるだけです。どちらも「ふてん」と読めばOKです。
中国語では「プリン」はどう書く?
日本での漢字表記を見たら、次に気になるのが中国語。実は中国語でも「プリン」は漢字で書き表せます。
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布丁(ブーディン)
こちらは、より英語の“pudding”の発音に忠実な当て字になっています。
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「布」=「プ」
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「丁」=「ディン」
簡素でありながら発音に近く、中国語ならではの実用的な表記ですね。
プリンだけじゃない!他のお菓子にも当て字が?
「プリン」のように、外来語に漢字を当てた言葉は実はたくさん存在しています。
たとえば……
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サラダ → 沙羅打
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カステラ → 加須底羅
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オムライス → 御飯卵包(こちらは意味寄り)
これらは、明治期以降に外国の食文化が広がる中で、日本人が“なんとか漢字にしたい”という気持ちから生まれた言葉たち。
現代ではあまり使われないものの、言葉の裏に文化が宿っているのを感じますね。
まとめ:プリンの漢字は「音」+「文化」でできていた!
今回ご紹介した内容を振り返ってみましょう。
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「プリン」は「布顚」「布顛」と書かれることがある
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英語「pudding」の音をもとにした当て字で、明治時代以降に広まった
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「顚」は「ひっくり返る」という意味を持ち、プリンの形状や食べ方ともリンク
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中国語では「布丁」と表記され、発音により忠実な形をとっている
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他の外来語にも当て字文化があり、言葉の歴史として面白い
身近なお菓子ひとつをとっても、そこには奥深い言葉の世界が広がっています。
当たり前に使っている「カタカナ語」も、見方を変えればまったく違った一面が見えてくるかもしれませんね。